昔ながらの家具屋は私にとって感慨深いものがあります。
お店の中に足を一歩踏み入れると、ラタンの座椅子がお出迎え。
木製の座卓や小物が無造作に置かれていて、奥まで入っていくと婚礼家具や桐ダンス等大型家具が並んでたり。
私は小さい頃から家具を買うときは親に連れられて、地元にある商店街の家具屋に足を運んでいました。
昭和の雰囲気と空気感が何とも言えず落ち着きましたね。
そんな昔ながらの家具屋、平成20年頃までは街中でよく見かけましたが、今ではほとんど見かけなくなりました。
ノーリー
平成20年頃まで街の家具屋は元気だった
昭和初期から桐ダンスや婚礼家具は飛ぶように売れました。
私の地元名古屋でも親の世代は結婚すると軽トラックの荷台に購入したたくさんの婚礼家具を積んで、嫁入りに行くような文化があったんですね。
今や商店街の多くはシャッター街と化していますが、当時は商店街の中にも多くの家具屋があり繁盛していました。
夫婦で経営されているお店もあれば、若い方で親から引き継いで経営されている方も多かったです。
私は当時メーカーに勤めていたので、問屋と取引していたのですが、全盛期は毎週大型トラックを商品で満載にして発送するほど景気が良かったです。
それだけ家具屋も繁盛していたんですね。
家具屋、問屋にとって厳しい時代の到来
昭和の時代から頑張ってきた家具屋にとって、平成は間違いなく厳しい時代になったことは間違いありません。
ニトリなど大型家具量販店や通販の普及により、家具は家具屋で買うという市民の意識が薄れていきます。
街の家具屋は昭和に置き去りにされてしまったかのような印象を受けました。
相次ぐ家具屋と問屋の廃業、倒産。
特に平成10年〜平成20年にかけて全国的にみても大きな倒産が相次ぎました。
問屋が倒産、そして・・
思い出したくもないですが、私も担当先の倒産を経験しています。
その日、大型トラックいっぱいの注文をもらって翌週月曜の朝、追加で注文をもらう予定でした。
月曜の朝、事務所に行くといつもならFAXで注文が入っているはずなのに、入っていません。
先週の金曜、確かに問屋の担当者が電話で言っていました『月曜、追加の注文FAX入れとくね！』と。
以前も朝FAXがきていないこともあったし、忙しいんだろうと思い催促せず昼まで待つことにしました。
その日は見積もりや社内の事務処理で追われ、気が付いたら15時に。
16時頃、本社の経理から電話があり『某商事、電話つながらないけど今日休み？』
ドキッとしました。まさか・・ね。
そして問屋担当者の携帯へ電話しました。
『もしもし・・』
問屋の担当者『はい・・』
いつもは元気な人が暗い声でこう言った『ごめん・・』
すぐに問屋に向かいました。事務所を出たのが17時。
到着したのは19時過ぎです。
2月の雪が降る寒い日で、凍えそうになりながら電車とバスを乗り継いで着いた頃には人だかりが。
どの顔ぶれも問屋の仕入れ先。
中には意気消沈している人も。
私もその1人でしたが。
その日の出来事は一生忘れないでしょう。
売掛金1500万円。会社にどう説明すべきか・・
与信オーバーして売り続けてしまった私はクビだけで済まないかも・・
覚悟しました。
若かった私は、ひたすら会社に謝り10枚始末書を書いて提出。
上司や役員から厳しいお叱りを受けたのはいうまでもありません。
減給、賞与カットもなく、解雇されなかったのは本当に救われたし感謝しています。
家具屋の不景気は問屋に影響する
私が経験したのは問屋の倒産でしたが、家具屋が不況に陥ると問屋も売上が落ちるんですね。
問屋は、メーカーから大量に仕入れて原価を抑えます。
そして家具屋に安く卸すのですが、家具屋が売れなかったら問屋の在庫はいうまでもなく増えていきます。
家具屋の景気が悪い→問屋の在庫が滞留する→支払いが厳しくなる
という悪循環に陥る訳です。
こういう状況が平成10年〜平成20年頃まで全国的に多発していました。
街から家具屋が消えた3つの理由
ニトリの急拡大
ニトリは本当にすごいと思います。
イケアや東京インテリアなど大型店もありますが、ニトリは別格です。
全国各地に店舗を構えて、家具の展開だけでなく日用雑貨品に至るまでお店に行けば何でも安く揃いますよね。
街の家具屋はニトリに追い討ちされて、大きなダメージを受けたといっても過言でありません。
通販の普及
15年前まではスマホで買い物をするのは普通ではありませんでした。
今はどうでしょう？
スマホ片手にサクッとお買い物できます。
楽天でポイント貯めたり、Amazonで商品を検索するのが当たり前の時代です。
家具通販なら安いうえ自宅まで届けてくれるのでラクですよね。
通販の普及により、家具屋が影響を受けたのはいうまでもありません。
時代のニーズに合わなくなった
街の家具屋が時代のニーズに合わなくなったも衰退の原因になったひとつです。
それは店頭に置いてある商品や店内の雰囲気にあります。
SNSを使って情報発信をしないのも少なからず影響します。
店主が高齢だと、そこまで手が回らないのは仕方ないことかもしれません。
反対にトレンドに敏感で商品や店内の内装にこだわったお店は若い方も買いに来ます。
SNSで拡散されて集客の流れもできるんですね。
これから家具屋が生き残るために必要なこと
これまで運だけで生き残ってきた家具屋は遅かれ早かれ、間違いなく衰退していくでしょう。
しかし時代のニーズにあった家具屋は生き残ることが可能です。
そのためにも『ニーズの変化』に柔軟に対応しなければいけません。
厳しいですが、家具屋にとって常に進化しなければ時代に取り残されるかもしれませんね。
関連記事
【2021年】家具小売業（小売店）の売上ランキング上位15社
